東洋医学とは・正しい漢方薬の取り扱いや飲み方について
東洋医学をご存じですか?
人間が本来持っている自然治癒力を高めて、体の不調を内側から根本的に治す治療法です。
不調は、体内の巡りのバランスが崩れることで起こります。
カウンセリングを受けて、体の状態にあった漢方薬を正しく使用・服用しましょう。
タップできる【目次】
1.東洋医学の歴史
東洋医学は約2000年以上前の中国で発祥し、7世紀頃に遣隋使や遣唐使によって日本にも伝わりました。
江戸時代の鎖国などを経て日本の気候や風土に影響を受けながら、独自に発展・実践され日本独自の東洋医学の考え方が確立されていきました。
江戸時代中期にオランダから入ってきた医学を蘭方と呼び、従来の日本の医学を漢方と呼ぶようになって漢方医学と蘭方医学を取り入れられた医学が発達し、両方の医学を学んだ医師を多く輩出されました。
しかし、明治時代になると西洋化・富国強兵を目指した新政府により西洋医学が重視されます。
東洋医学の漢方医も西洋医学の免許がなければ東洋医学の治療ができなくなり、漢方医学は極端に衰退して断絶の危機に瀕し、現在西洋医学の考え方が主流となった大きな要因と考えられます。
漢方医学は、その後も一部の医師や薬剤師、薬種商などの尽力により、民間レベルで生き続けました。
その後、和田啓十郎の『医界之鉄椎』・湯本求真の『皇漢医学』が出版されて、これら著述がきっかけとなり昭和に入り漢方医学は再び脚光浴びるようになり、多くの方の努力によって復活し現代医療の中で生かされています。
2.東洋医学の治療法
東洋医学では、人間が本来持っている自然治癒力を高めて、体の不調を内側から根本的に治す治療法です。
患部だけではなく全身を診てから治療法を判断し生薬や漢方・鍼・灸などを用いるのが特徴です。
国家資格者が行う医療業と認められている治療法は、鍼灸治療・漢方治療・手技治療の3つです。
<鍼灸治療>
人体各所にある経穴(ツボ)に、鍼や灸を用いて刺激を与えて改善し、身体のバランスを整える治療法
<手技治療>
人体各所にあるツボや経絡(けいらく)に手で刺激を与えて、身体のバランスを整える治療法
<漢方治療>
自然界にある植物・鉱物などの生薬(しょうやく)を、複数組み合わせて作られた薬を投与することで、身体のバランスを整える治療法
3.東洋医学の診断方法
治療方法を選択するには四診(望・聞・問・切)を行い、証(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方)を明らかにして処方する漢方薬を決定します。
診断方法には以下の四つの方法があります。
<四診>
望診(ぼうしん)
顔色や皮膚のつや・表情・態度・姿勢・体型から診断、また舌の状態を診る舌診(ぜっしん)も行う
聞診(ぶんしん)
声・話し方・咳の音・痰・呼吸音・口臭・体臭などから診断
問診(もんしん)
自覚症状・これまでにかかった病気・家族歴・月経の様子・ライフスタイル・食べ物の好みなどを聞きます
切診(せっしん)
体に触れて状態を見る
- 脈診(脈を診る)~脈の速さ・強さ・深さ・緊張度などから病態を把握する
- 腹診(腹部を診る)~胸脇苦満・心下痞硬・胃内停水など腹部の特別な所見の有無を診る
4.気・血・水(き・けつ・すい)とは
漢方薬を処方する際、その人の体質を判断するものさしに「気・血・水」(き・けつ・すい)と「証」(しょう)があります。
診察で「気・血・水」の状態を診て、どこに問題があるのかを探っていきます。
「気・血・水」はお互い関連し影響を及ぼし合っていて、これらが不足したり滞ったり偏ったりしたときに、全体のバランスが崩れ様々な不調や病気や障害を起こします。
これらの3要素がスムーズに体内を巡っているのがベストな状態です。
4-①.気
人間の体の中を巡っている精神と体の活動に必要な生命活動を営むエネルギー(3つのうち、もっとも重要な要素)
気虚(ききょ)
気が不足している状態 <症状> 体がだるい・無気力・疲れやすい・日中の眠気・食欲不振・お腹を下しやすい・風邪をひきやすいなど |
気滞(きたい)
気が滞っている状態 <症状> のどが詰まった感じがする・息苦しい・おなかが張る・不眠や不安・うつ・イライラ・偏頭痛・下痢と便秘が交互に起こる・生理不順・生理前の乳房や腹部の張り・吹き出物が出やすいなど |
気逆(きぎゃく)
下降しなければならなかった気が逆流し上昇してしまう状態 <症状> のぼせや動悸・発汗・頭痛、めまい・冷えのぼせ・上半身に不快な症状がある・嘔吐・咳・焦燥感など |
4-②.血
主に血液を指し、全身をめぐってさまざまな組織に栄養や老廃物を運び、循環器系や内分泌系機能などを調節している
瘀血(おけつ)
血の流れが滞っていて血液の循環が悪い状態冷えが原因の場合が多く、血液の質や血管の状態に問題があり血流が悪くなる場合も <症状> 頭痛・肩こり・冷え・のぼせ・顔色や唇の色が悪い・しみやそばかす・顔色がくすむ、クマ・色素沈着・不整脈や息苦しさ・不眠・精神症状・腰痛・筋肉痛・生理痛・月経異常・便秘・めまい・のぼせ・手足の冷え・手足のほてりなど |
血虚(けっきょ)
血が不足していて働きが低下した状態 <症状 > 顔色が青白い・髪や肌にハリやつやがない・肌荒・抜け毛・白髪・めまい・立ちくらみ・過少月経・疲れ目・目がかすむ・爪がもろい・肌の乾燥・筋肉がひきつる・こむら返り・痺れ・集中力がない・動悸・不眠など |
4-③.水
リンパ液や血液以外の汗などの体液で、免疫系をつかさどり体に栄養を与えたり不要なものを排出し活動を支える
水滞(すいたい)
水分が滞っている状態で「水毒」とも言われる <症状 > むくみ・めまい・頭痛・下痢・尿量が減少・口渇・鼻水・息切れ・咳・痰・水太り・だるさ・アレルギー反応など |
「気・血・水」3つの流れを滞りなく巡らせるためには「肝」・「心」・「脾」・「肺」・「腎」の「五臓」の働きが大切です。
5.五臓の働き
身体の働きを5つに分類したものを「五臓」といいます。
【肝】
<肝の働き>
- 血液の貯蔵し体の血量を調節する働き
- 循環・代謝・発散・排泄・解毒をコントロールする
- 自律神経や感情などをコントロールする
<肝が弱まると>
- 気や血の流れが滞り、生理痛や月経不順・下痢など不調を起こすことも
- イライラする・怒りっぽくなる・神経過敏・精神不安定など
- 筋肉のこわばり・筋肉の麻痺・目のかすみ・爪の変形
- 蕁麻疹・横断など
肝を正常に保つには、気の流れをスムーズにする生活を心がけましょう。
【心】
<心の働き>
- 血液を循環させる・血流の調節をする働き
- 睡眠リズムを調節する
- 心臓や循環器系に深い関わりを持つ
- 精神・意識活動や自律神経の働きを受け持つ
<心が弱まると>
- 不整脈・動悸・息切れ・熱感
- 不眠・浅い眠り
- 興奮・イライラする
- 焦燥感・不安感
- 物忘れ・集中力低下など
【脾】
<脾の働き>
- 消化器系に深い関わりを持つ
- 飲食を消化し栄養物質を全身へ運び気血のもとを補充する働き
- 血管壁の正常性を維持して血液が血管外に漏れ出るのを防ぐ
<脾が弱まると>
- 食欲低下・消化不良・胃もたれ・嘔吐
- 腹痛・下痢・腹部膨満感
- むくみ・肌肉のおとろえ
- 唇に影響が出たり、疲れやすいなど
【肺】
<肺の働き>
- 「気」を全身に巡らせる
- 水分代謝を調節する働き
- 毛穴の開閉や発汗などを通じて体温調節を行う
- 皮膚のバリア機能や免疫力にも関係
- 呼吸器系に深い関わりを持つ
<肺が弱まると>
- また、体への影響部位としては鼻・皮(皮膚)・毛にあらわれるとされています。
- 鼻や喉の粘膜の炎症・鼻水・気道粘膜の乾燥
- 風邪をひきやすい
- 呼吸困難・息切れ・咳
- 皮膚病
- 憂い・悲しみなど
【腎】
<腎の働き>
- 成長、発育、生殖、ホルモン系、老化に深い関わりを持つ
- 腎臓や膀胱などの泌尿器系に深い関わりを持ち、水分代謝の調節そする
- 骨の維持や内分泌系の働き
<腎が弱まると>
- 歯や骨がもろくなる
- 白髪・腰痛
- 白内障・目や皮膚の乾燥
- 耳鳴り・物忘れ・息切れ
- 性欲低下・不妊
- 思考力低下・集中力低下・判断力低下など
6.証(しょう)とは
「証」とは、患者さんそれぞれの心と体(体質・体力・抵抗力・症状の現れ方など)の状態をあらわす漢方独特の用語で、重要な役割を果たしていて、この証にあった漢方薬が処方されます。
「証」には、「虚・実」(きょ・じつ)があります。
「実証」(じっしょう)=体力や抵抗力がある人
筋肉質でがっちり・血色が良く肌つやがある・暑がり
「虚証」(きょしょう)=体力がなく弱々しい感じの人
細くてきゃしゃ・顔色が悪く肌荒れしやすい・寒がり
7.漢方薬について
漢方薬は自然界にある植物の葉・花・つぼみ・茎・枝・根・菌類・鉱物などの生薬を、原則として複数組み合わせて作られた薬を言います。
複数の有効成分が含まれていて、さまざまな症状に効果を発揮します。
病院で処方される漢方薬は、健康保険が適用される漢方製剤で、148処方が厚生労働省に承認されています。
漢方製剤は、生薬の持つ薬効を引き出し、服用・保存しやすい状態に加工されたものになっています。
漢方薬も薬なので、副作用があり、場合によってはアレルギー反応を起こすこともあります。
医師の診察を受けて、ご自身の体質や症状にあった漢方薬をお選びください。
頭痛でお悩みの方におすすめの漢方薬はこちら腸の症状でお悩みの方におすすめの漢方薬はこちら
7-①.漢方薬の使用方法・注意点
複数の漢方薬や相反する効果の漢方薬を同時に服用すると、生薬のバランスが崩れ効果を発揮することができない場合があります。
漢方薬を併用する場合は、医師、薬剤師に相談し、相互作用や、副作用、投薬禁忌や慎重投与など十分にご注意ください。
持病やアレルギーがある方は事前に医師に相談してください。
用法・用量は医師・薬剤師の指示に従ってを服用し、胃痛や腹痛、湿疹やむくみなどの症状が現れた場合は一旦服薬を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
妊娠中や授乳中は赤ちゃんへの影響が大きいので、必ずかかりつけの医師に相談してください。
甘草(カンゾウ)・麻黄(マオウ)・大黄(ダイオウ)・芒硝(ボウショウ)・附子(ブシ)が含まれている漢方薬は過剰摂取にならないよう注意してください。
症状がなくなったら服用を中止し、効果が出ない場合や症状が残っていても、使用中止の支持がある場合には指示に従い服用を中止しましょう。
7-②.漢方薬の飲み方
お茶・牛乳・ジュースなどは薬の働きや吸収に影響を与えるので一緒に飲むことは避けて、水または白湯で飲むようにしましょう。
顆粒の場合は水か白湯(さゆ)を口に含み、漢方薬をその水の上に落として、水と漢方薬を一緒に飲み、そのあとにまた水か白湯を飲みます。
<漢方薬を飲むタイミング>
一般的に食前・食間で胃に食べ物が入っていない時に服用します。
- 食前とは(食事の30分~1時間前)
- 食間とは(食事と食事の間のことで食後2時間ぐらい)
1日2回服用の漢方薬は次の服用までの間隔を6時間以上、1日3回服用の漢方薬は4時間以上あけ、飲み忘れた場合2・3回分を1度に飲むと漢方の作用が強く出るため、1回分のみ飲むようにしましょう。
7-③.漢方薬の保管方法・使用期限
直射日光の当たらない、風通しが良く湿気の少ない涼しい場所に保管しましょう。
使用期限は、一般的に未開封なら3~5年と言われていますが、症状も体質も処方時とは異なる場合がありますので、医師や薬剤師にご相談ください。
まとめ
それでは、東洋医学・漢方薬について以下にまとめます。
- 東洋医学は、人間が本来持っている自然治癒力を高めて、体の不調を内側から根本的に治す治療法
- 患部だけではなく全身を診てから治療法を判断し、生薬や漢方・鍼・灸などを用いるのが特徴
- 治療法は、鍼灸治療・漢方治療・手技治療の3つがあり、診断方法には、顔色や体形や舌を診る(舌診)などの望診(ぼうしん)・声や呼吸音などを聞く聞診(ぶんしん)・自覚症状や病歴などを聞く問診(もんしん)・体に触れて状態を見る切診(せっしん)がある
- 健康でいるためには、体内の「気・血・水」をバランス良く巡りをスムーズにすることが大切
- 滞りなく巡らせるためには「肝」・「心」・「脾」・「肺」・「腎」の「五臓」の働きが大切
- 患者さんそれぞれの「証」にあった漢方薬が処方される(「証」とは、心と体の状態をあらわす漢方独特の用語)
- 漢方薬は複数の有効成分が含まれていて、さまざまな症状に効果を発揮する
- 漢方薬も副作用やアレルギー反応を起こすこともあるので、医師の診察を受け自身の体質や症状にあった漢方薬を選ぶ
- 用法・用量は、医師・薬剤師の指示に従って服用する
- 漢方薬を飲むタイミングは、一般的に食前(食事の30分~1時間前)・食間(食事と食事の間のことで食後2時間ぐらい)で、胃に食べ物が入っていない時に服用する
- 顆粒の場合は水か白湯(さゆ)を口に含み、漢方薬をその水の上に落として、水と漢方薬を一緒に飲み、そのあとにまた水か白湯を飲む
- お茶・牛乳・ジュースなどは薬の働きや吸収に影響を与えるので、薬と一緒に飲むことは避けて、水または白湯で飲む
- 1日2回服用の漢方薬は、次の服用までの間隔を6時間以上、1日3回服用の漢方薬は4時間以上あける
- 飲み忘れた場合、2、3回分を1度に飲むと、漢方の作用が強く出るため、1回分のみ飲むようにする
- 複数の漢方薬や相反する効果の漢方薬を同時に服用すると、生薬のバランスが崩れ効果を発揮することができない場合があるので、漢方薬を併用する場合は、医師、薬剤師に相談する
- 漢方薬の併用による相互作用・副作用・投薬禁忌や慎重投与などに注意する
- 甘草(カンゾウ)・麻黄(マオウ)・大黄(ダイオウ)・芒硝(ボウショウ)・附子(ブシ)が含まれている漢方薬は過剰摂取にならないよう注意する
- 症状がなくなったら服用を中止し、効果が出ない場合や症状が残っていても、使用中止の支持がある場合には指示に従い服用を中止する
- 持病やアレルギーがある方は事前に医師に相談してください。
- 妊娠中や授乳中は赤ちゃんへの影響が大きいので、必ずかかりつけの医師に相談する
- 保管方法は、直射日光の当たらない、風通しが良く湿気の少ない涼しい場所に保管する
- 使用期限は、一般的に未開封なら3~5年と言われていますが、症状も体質も処方時とは異なる場合がありますので、医師や薬剤師に相談する
- 用法用量を守って服用し、胃痛・腹痛・湿疹・むくみなどの症状が現れた場合は一旦服薬を中止し、医師や薬剤師に相談する
- それぞれの症状にあった漢方薬を使用する
※頭痛でお悩みの方におすすめの漢方薬はこちらから→頭痛の辛い症状に使用される漢方薬について
※腸の症状でお悩みの方におすすめの漢方薬はこちら→下痢や便秘・腹痛など腸の症状におすすめの漢方薬について
以上、東洋医学・漢方の飲み方、取り扱いついてご紹介しました。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。