脂質異常症はコレステロール値や中性脂肪の量に問題がある疾患です

脂質異常症は動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患など、様々な病気の原因になります。

自覚症状がほとんどなく、血液検査で発見されることが多い疾患です。

 

1.脂質異常症とは

脂質異常症は、血液中のコレステロールや中性脂肪が多すぎる状態、あるいは少なすぎる状態をいいます。

以前は高脂血症と呼ばれていましたが、低HDLコレステロール血症のように値が低くなる脂質異常症もあるため、2007年に診断名が変更されました。

脂質異常症を放置しておくと動脈硬化を進行させて、心筋梗塞や狭心症、脳梗塞、末梢動脈疾患など様々な病気の原因となります。

 

コレステロールについて

コレステロールは脂質の一つで、細胞膜やホルモン、消化に必要な胆汁酸やビタミンDの原料となります。

3大栄養素の脂質・糖質・たんぱく質が材料です。

生命維持に必須な物質で、脳の脂質の4分の1がコレステロールで、細胞膜の原料もコレステロールです。

コレステロールにはHDLコレステロールと、LDLコレステロールがあり、通常、血液中のコレステロールの割合はバランスが保たれています。

活性酸素によって酸化したLDL(悪玉)コレステロールが増えることで、動脈硬化など引き起こします。

健康を維持するには、HDL(善玉)コレステロールを増やして、LDL(悪玉)コレステロールを減らすことが大切です。

 

2.脂質異常症の原因

  • 過食
  • 多量の飲酒
  • 脂質の摂りすぎ
  • 糖質の摂りすぎ
  • 糖尿病
  • 運動不足
  • 喫煙
  • 遺伝
  • 甲状腺機能低下症
  • ストレスなど

 

3.脂質異常症のタイプ

脂質異常症は以下のタイプに分類されます。

  • 高LDLコレステロール血症
    (LDLコレステロールの数値が高い)
  • 低HDLコレステロール血症
    (HDLコレステロールの数値が低い)
  • 高トリグリセライド血症
    (中性脂肪の数値が高い)
  • 高non-HDLコレステロール血症
    (総コレステロールからHDLコレステロールを引いた数値が高い)

 

【脂質異常症診断基準】空腹時採血

脂質異常症のタイプ 脂質の種類 診断基準 基準値
高LDLコレステロール血症 LDLコレステロール 140mg/dL
以上
60~
119mg/dL
境界域高LDLコレステロール血症 120~
139mg/dL
低HDLコレステロール血症 HDLコレステロール 40mg/dL
未満
40mg/dL
以上
高トリグリセライド血症 中性脂肪
(トリグリセライド)
150mg/dL以上(空腹時採血) 30~
149mg/dL
175mg/dL以上(随時採血)
高non-HDLコレステロール血症 non-HDLコレステロール 170mg/dL
以上
90~
149mg/dL

 

non-HDLコレステロールとは

non(ノン)-HDLコレステロールとは、総コレステロールからHDLコレステロールを引いた値です。

動脈硬化を予防するHDLコレステロール以外の、LDLコレステロールや中性脂肪、レムナント(LDLコレステロールや中性脂肪とたんぱく質が結びつき、分解される時に生じる残りかす)などが含まれます。

現在、特定検診にnon-HDLコレステロールの項目が採用され、血液中のコレステロールのバランスは、より正確に調べられるようになりました。

 

数値から考えられる疾患

  • non-HDLコレステロールの数値が高い場合
    →動脈硬化、脂質異常症、甲状腺機能低下症、家族性高脂血症など
  • non-HDLコレステロールの数値が低い場合
    →栄養吸収障害、低βリポ蛋白血症、肝硬変など

 

4.高LDLコレステロール血症

高コレステロール血症は、LDLコレステロール値が高くなった状態です。

 

診断基準

  • LDLコレステロールの正常値60~119mg/dl
  • 高LDLコレステロール血症→LDLコレステロール値が140mg/dl以上
  • 境界域高LDLコレステロール血症→120~139mg/dL

 

4‐①.高コレステロール血症の原因

原因としては、食生活の乱れや生活習慣などで、トランス脂肪酸の摂取や飽和脂肪酸の過剰摂取があげられます。

コレステロールの多い食品もLDLコレステロールを高くしますが、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸の摂りすぎの方がリスクが高いです。

食生活の乱れや生活習慣が原因になります。

 

4‐②.高コレステロール血症の改善策

改善策としては、食生活の見直しと有酸素運動が効果的です。

食べ過ぎに注意して、トランス脂肪酸や飽和脂肪酸の摂取量を控えることでLDLコレステロール値を下げることができます。

 

高コレステロール血症についての詳細はこちらから↓

高LDLコレステロール血症の改善策は食事の見直しと運動が効果的です

5.低HDLコレステロール血症

 

低コレステロール血症は、HDLコレステロール値が低くなった状態をいいます。

 

診断基準

  • HDLコレステロールの正常値はHDLコレステロール値が40mg/dl
  • 低HDLコレステロール血症→HDLコレステロール値が40mg/dl未満

 

HDLコレステロールの働きは、血管壁に付着したLDLコレステロールを回収して肝臓に戻し、動脈硬化を防ぎます。

HDLコレステロールが不足すると、血液中の余分なコレステロールを回収できない為、動脈硬化を進行させて狭心症や心筋梗塞といった心臓病や脳卒中のリスクが高まります。

 

5‐①.低HDLコレステロール血症の原因

HDLコレステロール値が低下する原因には、遺伝や薬の影響、糖尿病などがあります。

その他には、食生活の乱れや運動不足、喫煙など生活習慣によるものがあります。

喫煙はLDLコレステロール増加させてHDLコレステロールを減少させてしまいます。

 

5‐②.低HDLコレステロール血症の改善策

運動や減量・禁煙によりHDLコレステロールの上昇が見込まれますので、生活習慣を改善しましょう。

食生活では、マーガリンやサラダ油などのトランス脂肪酸は、HDLコレステロール(善玉)を減少させ、LDLコレステロール(悪玉)を増加させます。

食べ過ぎに注意して、野菜や海藻など食物繊維や大豆、青魚などを摂りましょう。

炭水化物の摂りすぎや、果物の果糖は中性脂肪を増加させるので、食べ過ぎに注意しましょう。

運動は、ゆっくりめのジョギングや早歩きなど、少し息が上がる程度の有酸素運動が効果的です。

 

低コレステロール血症についての詳細はこちらから↓

低HDLコレステロール血症はHDLコレステロールが少ない状態です

 

6.高トリグリセリド血症

 

高トリグリセリド血症は、慢性的に血液中に中性脂肪が多くなった状態が高トリグリセリド血症です。

 

診断基準

  • 高トリグリセリド(中性脂肪)血症→中性脂肪値が150mg/dl以上

 

食事の影響を受けやすく、検査前に脂肪の多い食事したり、お酒を飲むと高値になりやすいです。

 

6-①.高トリグリセリド血症の原因

高トリグリセリド血症の主な原因としては、糖分の摂りすぎ、アルコール、脂肪・油もの・糖質のとりすぎなどです。

タバコも中性脂肪を増やします。

 

高トリグリセリド血症は中高年男性に多く、中性脂肪が過多な状態です。

中性脂肪値が非常に高い状態が続くと、激痛を伴う急性膵炎が発症することが知られています。

糖尿病も合併しやすく、アルコールや脂肪、糖質の摂り過ぎは肝臓の細胞内に中性脂肪がたまり脂肪肝を招きます。

 

6-②.高トリグリセリド血症の改善策

改善策としては、運動や減量をおこなうことで中性脂肪値を下げることができます。

ゆっくりめのジョギングや早歩きなど、少し息が上がる程度の有酸素運動や、スクワットなどの無酸素運動を習慣化させましょう。

 

タバコアルコールは中性脂肪を増やしますので、禁煙してお酒を控えましょう。

 

食生活では、炭水化物の摂りすぎや、果物の果糖は中性脂肪を増加させるので、食べ過ぎに注意が必要です。

青魚に多く含まれるDHAやEPAには、中性脂肪値を下げ、LDLコレステロールを増加させない働きがあるのでおすすめです。

野菜や海藻類、きのこ類などは中性脂肪やコレステロールの吸収を防ぐ働きがあるので摂取することを心がけましょう。

 

高トリグリセリド血症についての詳細はこちらから↓

高トリグリセリド血症の改善策について

 

7.家族性高コレステロール血症

 

家族性高コレステロール血症は、LDLコレステロールが高く、早期に心臓の血管に動脈硬化を起こす遺伝性の疾患です。

通常LDLコレステロールは肝臓で処理されますが、肝臓で処理できず血液中に溜まって早期に動脈硬化を引き起こして心筋梗塞や狭心症を発症させます。

予防するには定期的な検査で早期発見をして、適切な治療を行い、LDLコレステロールを低下させる必要があります。

 

8.脂質異常症には運動が効果的

 

脂質異常症には適度な運動が必要で、特に有酸素運動が効果的です。

 

8-①.有酸素運動

有酸素運動は、軽~中程度の負荷を継続的にかけて、息切れしない程度の運動です。

酸素を使って体内の脂質や糖質をエネルギー源として筋肉を動かします。

中性脂肪を減らし、HDLコレステロールを増やして悪玉のLDLコレステロールを減らす効果があります。

 

主な有酸素運動

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • サイクリング
  • 水泳
  • アクアビクス
  • アクアウォーキング
  • エアロビクス
  • エアロバイクなど

頻度は週3~5日、1回あたり30~60分を継続して行うことが理想です。

 

8-②.無酸素運動

無酸素運動は、短い時間で大きな力を発揮して酸素を使わない強度の高い運動で、酸素を使わず筋肉に蓄積された糖質をエネルギー源とする運動です。

基礎代謝を高めることができ、カロリーを消費しやすい身体にします。

成長ホルモンの分泌を促進させます。

 

主な無酸素運動

  • 短距離走
  • 筋トレ
  • ウエイトリフティング
  • スクワット
  • 腕立て伏せなど

頻度は週に2~3回がベストです。

一回のトレーニング時間は、30分~60分以内がベストです。

筋肉はトレーニングによって筋繊維が傷つき、2~3日かけて修復する過程で筋繊維が太く強く成長するので、筋トレ後2~3日間は筋肉を休息させることが大切です。

 

9.脂質異常症の改善方法について

 

脂質異常症の改善には、食事療法と運動療法が中心となります。

改善策は食生活の見直しと有酸素運動が効果的です。

マーガリンやサラダ油などのトランス脂肪酸は、HDLコレステロール(善玉)を減少させ、LDLコレステロール(悪玉)を増加させます。

日々トランス脂肪酸を摂取することで、動脈硬化を招き心血管疾患や特に冠動脈性心疾患などのリスクを高めます。

マーガリンやショートニング、サラダ油やパーム油、マヨネーズなど、それらを使用した加工食品やスナック菓子、インスタント食品、洋菓子、パンなどにはトランス脂肪酸が多く含まれているので注意しましょう。

 

  • 飽和脂肪酸を含む食品の過剰摂取をしない
  • 動物性脂肪(バター、ラード、肉の脂身)やトランス脂肪酸(マーガリン、ショートニングなど)を控える
  • 肉料理よりも、なるべく青魚料理や大豆製品を使った料理を選ぶ
  • 野菜やきのこ類、海藻類など水溶性食物繊維含む食材をを積極的に摂る
  • 納豆や豆腐など大豆製品を積極的に摂る
  • 抗酸化物質(ビタミンA・C・E、ポリフェノールなど)を含む食材を摂って活性酸素を消滅させる
  • 糖分を多く含む菓子類やジュースなどの清涼飲料は控える
  • 炭水化物の摂りすぎや、果物の果糖は中性脂肪を増加させるので、食べ過ぎに注意
  • 青魚、アマニ油やえごま油(酸化しないように保存する)など、不飽和脂肪酸のオメガ3系脂肪酸を積極的に摂る
  • 調理には酸化しにくいオリーブオイルがおすすめ
  • オメガ6系脂肪酸のリノール酸の摂りすぎに注意
    (リノール酸→大豆油、ごま油、綿実油、コーン油、サラダ油、グレープシードオイルなど)
  • 洋食より和食がヘルシー
  • 食べ過ぎに注意しカロリーを控える
  • 肥満は減量する
  • ゆっくりめのジョギングや早歩きなど、少し息が上がる程度の有酸素運動
  • スクワットなどの筋力トレーニング
  • アルコールの摂取量を控える
  • 禁煙する

 

以上、脂質異常症についてご紹介させていただきました。

最後までお読みいただき誠にありがとうございました。

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