お腹が張って大量のガスが出るSIBOという疾患をご存じですか?
お腹が張って苦しい症状はありませんか?
腸内環境に良いとされている食物繊維や発酵食品をとると、便秘や下痢・腹痛を引き起こし、大量のガスが発生して調子が悪くなる人がいます。
もしかすると、小腸内で細菌が過剰に繁殖しているかもしれません!
大腸に存在する腸内細菌が小腸で過剰に繁殖している状態の疾患を、SIBO(小腸内細菌増殖症)といいます。
タップできる【目次】
1.SIBO(小腸内細菌増殖症)
本来、小腸は腸内細菌が少ない場所(大腸の約100兆個に対し小腸は約1万個)です。
SIBOを発症すると、小腸内に善玉菌や悪玉菌といったさまざまな菌が逆流して、大量のガスを発生させてしまいます。
小腸はガスに耐えるような構造はしておらず、水素やメタンガスが増えると風船のように腸管が膨らんだり縮んだりを繰り返し、小腸は炎症を起こし腸粘膜が傷つき細胞の間に隙間があいて穴があきます。
その結果、有害物質や毒素、細菌やアレルゲンなどが漏れ出して血管内に取り込まれ、さまざまな不調をおこしリーキーガット症候群のような症状を起こします。
SIBOが重症化すると脂溶性のビタミンが食べ物から吸収できなくなり、免疫力の低下をはじめ、さまざまな症状が出ます。
アレルギーや感染症を発症し、これらを免疫システムが異物として認識し抗体を作ります。
症状が進むと自分自身の正常な細胞や組織を攻撃するようになり、自己免疫疾患となります。
膠原病、間接リウマチ、甲状腺炎の人は、SIBOの確率が高いとのことです。
また、高齢になるほどSIBOのリスクが高まります。
小腸は胃カメラが届きにくいので、過敏性腸症候群(IBS)と間違えられることもありますが、最近では過敏性腸症候群と考えられてきた人の84%がSIBOだったという報告があります。
2.SIBOの症状としては
- 腹痛
- 下痢や便秘
- 消化不良
- 腹部膨満感
- 異常なガス発生
- 鼓腸
- げっぷや胸やけ
- ブレインフォグ(頭に霧がかかった様にボーッとする)
- 精神的混乱
- 短期記憶障害・判断障害
- 集中力低下
- 肥満や痩せ
このような症状がありませんか?
腸以外にも、さまざまな体調不良を起こす疾患です。
3.SIBOと似た症状やSIBOが原因かもしれない病気
SIBOと似た症状や、SIBOが原因かもしれない病気もあります。
主な病気について以下に記載します。
3-①.【機能性ディスペプシア】
胃部痛や胃もたれなどの症状が慢性的に続いているにもかかわらず、採血検査や胃カメラ検査などを行ってもその原因となるような異常が特定できない病気です。
<主な症状>
- 胃痛
- 胃もたれ
- 胃のむかつき
- みぞおちの痛み
<原因>
- 胃の運動機能障害
- 胃の知覚過敏
- ストレスなど
3-②.【クローン病】
大腸や小腸の粘膜に慢性の炎症や潰瘍を引き起こす病気で、はっきりした原因は見つかっていません。
10~20代に多く、男性のほうが女性より2倍発症しやいようです。
<主な症状>
- 腹痛や下痢
- 血便
- 発熱
- 全身倦怠感
- 体重減少
<原因>
先進国に多く、北米やヨーロッパでは日本の約10倍の発症率となっています。
さまざまな説はありますが、動物性脂肪やたんぱく質を多く摂取する人のほうが発症しやすいことがわかっていて、腸内環境の状態も関与していると考えられています。
3-③.【セリアック病】
セリアック病は、小麦・大麦・ライ麦に含まれるグルテンというタンパク質に対して、誤って免疫反応を起こしてしまう自己免疫疾患です。
グルテンを摂取することにより、小腸粘膜に炎症が起こり傷つきます。
ダメージを受けた小腸には炎症がおこり、萎縮して栄養を吸収できずさまざまな障害が起こります。
通常は北欧系の人にみられる遺伝性の病気で、欧米では男性よりも女性のほうが2倍多く発症しています。
<主な症状>
- 無症状者も多い
- 慢性的な下痢
- 腹痛や膨満感
- 食欲不振
- 体重減少
- 貧血
- 発疹
- 骨粗しょう症、関節痛
- 口内炎
- 頭痛
- 倦怠感
- 小児でみられる症状は、成長障害、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便
上記の症状が似ている病気と区別するには、SIBOの検査を受けることをおすすめします。
4.SIBOの原因
- 蠕動(ぜんどう)運動の衰え
- 加齢による機能低下
- 免疫力の低下
- 小腸の出口のバウヒン弁が閉じなくなることで大腸から細菌が小腸に逆流する
- 胃酸分泌の低下
- PPI(プロトンポンプ阻害薬)の影響による胃酸分泌低下
- 連続して間食し空腹の時間を作らない
- 小麦粉の過剰摂取
- 糖分(人工甘味料を含む)・乳製品の過剰摂取
- 運動不足
- 睡眠不足
- ストレス
さまざまな原因がありますが、思い当たることはありませんか?
5.FODMAPという糖質が原因の場合も
他に病気がなく、腸に良い食生活をしていてもお腹の調子が改善しない人は、FODMAPと呼ばれる糖質が原因かもしれません。
FODMAPとは、発酵性のあある4種類の糖質の頭文字を組み合わせたものです。
F | 発酵性 | オリゴ糖・二糖類・単糖類・糖アルコール |
O | オリゴ糖 | 小麦粉・にんにく・玉ねぎ・豆類・大豆食品など |
D | 二糖類 | 牛乳・乳製品など |
M | 単糖類 | 果物・はちみつ・高果糖液糖・果糖ぶどう糖液糖など |
A | AND | |
P | ポリオール (糖アルコール) |
キシリトール・ソルビトール・マルチトールなど(水素を添加し科学的に安定化させたもので、果物やきのこなど自然由来のものに含まれている) |
5-①.FODMAPの特徴
FODMAPの特徴は、小腸での吸収が悪く小腸内で糖質の濃度が高くなり、その濃度を薄くするため大量の水が小腸内に引き込まれます。
その結果、腸のぜん動運動が過剰になって下痢や腹痛を引き起こします。
小腸で吸収されないまま大腸に到達して、腸内細菌はFODMAPをエサに発酵し、水素やメタンガスを発生させます。
腸内は大量に発生したガスで張り、痛みやガスを発生させたり便秘を引き起こす原因になります。
6.SIBOの改善方法
数多くの高FODMAP食品の中でも、合わない人が多いのは小麦粉です。
まずは、パンやパスタを控えて、お米に替えることから始めてみてもいいかもしれません。
改善には、問題を引き起こす可能性が高いFODMAPという糖質を、できるだけ避けた食生活を取り入れることです。
低FODMAP食は、オーストラリアのモナッシュ大学で開発され、安全かつ有効性の高い治療法として広く実施されています。
6-①.低FODMAP食事法
- 3週間は高FODMAP食品を一切摂らない(パン、納豆、牛乳、りんご、きのこ類など)
- その後、高FODMAP食品を糖質別に1グループずつ試す(ポリオール、単糖類、二糖類、オリゴ糖)
- 食後に、何を食べるとどんな症状が出るのかを記録して特定する
江田証先生の新しい腸の教科書から引用
【FODMAP食品一覧表】
肉・魚・卵 | 低FODMAP | 高FODMAP |
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豆類・大豆製品 | 低FODMAP | 高FODMAP |
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豆類・ナッツ | 低FODMAP | 高FODMAP |
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穀物 | 低FODMAP | 高FODMAP |
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野菜・いも・きのこ類・海藻類
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低FODMAP | 高FODMAP |
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果物
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低FODMAP | 高FODMAP |
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乳製品など
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低FODMAP | 高FODMAP |
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調味料・スパイス・その他
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低FODMAP | 高FODMAP |
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飲み物
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低FODMAP | 高FODMAP |
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江田証先生の新しい腸の教科書、宇野良治先生のコラム参照
試してみて、お腹の調子が悪くならなければ、その高FODMAP食品は食べてもOKです。
高FODMAP食品を一生食べられないわけではありません。
この方法で、約8割の人に症状の改善がみられるそうです。
低FODMAP食はすぐれた方法ですが、長年のがんこな不調が改善されない場合は、医師と相談しながら治療を進めることをおすすめします。
6-②.小麦粉の摂取を控える
小麦粉のグルテンは、高FODMAP食品の中でも症状が出やすく、腸粘膜を傷つけて腸の粘膜に隙間を作ってリーキガット症候群を引き起こします。
未消化の食べ物やウイルス・アレルゲンが漏れ出して血管内に入り、全身をめぐってさまざまな悪影響を引き起こします。
小麦粉の過剰摂取を控えましょう。
6-③.糖分(人工甘味料を含む)・乳製品の過剰摂取を控える
糖分(人工甘味料を含む)の過剰摂取は、カンジダ菌を増殖させてSIFOを発症し悪影響を及ぼします。
牛乳に含まれるカゼインというたんぱく質を消化する酵素を持ってる人は少なく未消化のまま腸内に残り炎症を起こしてしまいます。
糖質・乳製品の過剰摂取は控えましょう。
※SIFOについての詳細はこちらから→その症状はお腹のカビが原因かも!SIFOという疾患をご存じですか?
6-③. プロントポンプ阻害剤(PPI)の長期服用を避ける
胃酸は口から入ってきたカビや細菌・ウイルスを死滅させる働きをしています。
胃酸を止める薬を長期服用すると、腸内環境が乱れ善玉菌が減り消化管はアルカリ性に傾きます。
胃酸が少ないと食べたものが消化できず、未消化物がそのまま腸まで届いてアレルギーを発症したり、腸に炎症を起こしたりとさまざまな疾患を引き起こします。
その他にも、解熱鎮痛剤の使用で胃酸の分泌が減少します。
プロントポンプ阻害薬・解熱鎮痛剤の長期服用や乱用は控えましょう。
6-④.空腹の時間を長めに作る
小腸に食べ物が入ってくると、ぜん動運動が弱まり空腹時間にぜん動運動は活発になります。
続けて食事や間食をしていると、ぜん動運動が弱まり腸の掃除ができなくなってしまい、腐敗した食べ物が腸内にとどまり悪玉菌が増える原因になります。
夕食は早めに終えて朝食までの時間を長くとって、空腹時間をを多めに作りましょう。
6-⑤.天然由来の抗菌作用がある食材をとる
<抗菌作用のある主な食材>
- レモン・生姜・シソ・ブロッコリースプラウトなど
- ココナッツオイル・オリーブオイル・オレガノオイルなど
- クローブ・ナツメグ・シナモン・ローズマリー・ターメリックなど
高FODMAP食品ですが、抗菌作用のある食材
- 梅干し・わさび・にんにく・マヌカハニーなど
6-⑥.適度な運動をする
運動不足は便の滞在時間が長くなり、腸が有害物質に触れる時間が長くなります。
1日15分だけでもいいので、少し息が切れるくらいの適度な運動をしましょう。
6-⑦. 質の良い睡眠を心がける.
睡眠不足は、腸内環境を乱します。
眠りの質が整うゴールデンタイムの、午後10時~午前2時までに睡眠をとることが理想です。
スマホやパソコンのブルーライトは覚醒作用があり、睡眠を促すメラトニンの分泌が抑制されて、睡眠の質を低下させてしまいます。
眠る2時間前からは、使用を控えましょう。
メラトニンの材料のセロトニンを作るには、朝食でお味噌汁やバナナを食べましょう。
(青いバナナは、果糖+オリゴ糖の成分が多いので高FODMAP、シュガースポットという黒い斑点が出来た時点で食べましょう。)
起床時にカーテンを開け日光を浴びると、全身の細胞が目覚めて体内時計が整います。
6-⑧.ストレスをためない
脳と腸は密接に関係しています。
ストレスを感じると腸内環境が乱れます。
楽しさや幸せを感じると、脳から幸せホルモンと呼ばれるセロトニンが分泌されて、自律神経が整い腸の働きが良くなって免疫力が高まります。
深呼吸をして酸素を体内に取り入れ、副交感神経を活性化させてリラックスしましょう。
7.まとめ
SIBOを改善する生活習慣や食事方法について以下にまとめます。
- 低FODMAP食をとる
- 小麦粉の過剰摂取を控える
- 糖分(人工甘味料を含む)・乳製品の摂取を控える
- プロントポンプ阻害薬(PPI)の長期服用を避ける
- 夕食と朝食の間の空腹時間を長くとり腸の掃除タイムを作る
- 天然由来の抗菌作用のある食物をとる
- 1日15分でも良いので軽い運動をする
- 質の良い睡眠を心がける
- ストレスをためずに、笑ってセロトニンを増やして免疫力をあげる
以上、SIBOの症状・改善するための生活習慣・食事方法などをご紹介しました。
腸に良い食生活をしていても不快な症状に悩まされている場合は、SIBOかもしれません。
改善してから腸内環境に良い食事で、おなかの調子を整える整え健康に生活したいものですね!
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。